2012年12月31日月曜日

体験参加者からの質問その2

体験参加者から寄せられる質問で多いものに、ここで回答しています。

質問 その2
本当に筋トレしなくて大丈夫ですか?

監督の回答
・いま高校野球は「筋トレが主流」「筋トレは当たり前」のように思われがちですが、すでに「筋トレが絶対ではない」事実に気づき始めた監督はたくさんおられます。筋トレの弊害をそれぞれの立場で感じておられるからでしょう。
・筋トレは、部分を鍛えるトレーニングです。筋力をつけると、どうしても部分に頼る動きになり、野球に必要な全身の連動に支障をきたします。当たれば飛ぶのですが、当たりにくくなる。球は速くなっても打たれやすい、故障をしやすいなどの結果につながります。
・筋トレを指導したり、筋トレでビジネスをしている方々の多くは、「筋トレでケガを予防する」と言われます。それが筋トレに熱心に取り組む動機にもなっていますが、本当でしょうか? 私は、スポーツライターとしての取材経験を通じ、「筋トレに熱中したためにケガをしやすい身体になった、動きが堅くなった」と思われる選手はたくさん見ていますが、ケガからのリハビリはともかく、「日頃から筋トレを熱心にしているお陰でケガがない」と言える選手はあまり知りません。
・筋トレをすれば、確かに短期的な効果は目に見えて出ます。筋肉が大きくなる、見かけのパワーは伸びる。「いままで70mしか飛ばなかった打球が80m飛ぶようになった」という成果は出るでしょう。けれど、そうした一時的な成長(?)に目を奪われてはいけません。それによって失う大切なものがあまりにも大きいからです。
・例えばバッティングで、遠くに飛ばす力を得た代わりに、「ボールを楽に見きわめて身体が自然に反応する感性」を失ったら、どうでしょう? 当たれば飛ぶけれど、どんどん当たる確率は悪くなります。当たらないから、ますます力んで、調子の波が激しくなるでしょう。自信を失って打席に立つのが怖くなる……、強打者と呼ばれるプロ野球選手でさえ、この泥沼にはまって苦しんでいるのが実情です。その悩みを解決するために、薬物の力を借りる選手がいることは、メジャーリーグの現実がはっきり物語っています。それでもみなさんは、大切な自分のお子さんに筋トレを勧めますか?
・松井秀喜選手が引退しました。最後は日本球界でプレーして欲しかった、そう期待したファンも多かったでしょう。それが難しいほど松井選手は傷んでいたようです。メジャーでも素晴らしい活躍をした松井選手。新たな歴史を拓いた挑戦にはもちろん、心から感謝します。けれど、松井秀喜選手ほどの選手が、なぜこの若さで引退を決断せざるをえないのか。メジャーでは巨人時代ほどホームランが打てなかったのか? その一因に、筋トレがあったのではないかと、私はいくつかのラジオからコメントを求められ、発言しています。アメリカに行って、周囲の選手たちのパワーに圧倒され、自分もパワーアップしなければと焦る。それが結果的にケガにつながり、しなやかさを失って、選手寿命を縮めたのではないか。松坂大輔投手も同様です。心配です、残念です。
アメリカに行っても自分のスタイルを変えない、イチロー選手、野茂選手が長く活躍しているのと対照的です。ふたりも筋トレはしていますが、それほど筋力強化に依存していなかったと思います。
・高校野球界では、たしかにまだ筋トレを熱心にやるチームが大勢です。2年4ヵ月という短い期間で結果を出すため、そして多くの部員を同時に練習させるため、筋トレ以上の方法に出会えないチームはいまも筋トレを採用しています。簡単にいえば、身体の真理を感じることができず、高校生たちに熱心に筋トレを推奨するような指導者には、私は自分の大切な選手を任せたくない。しっかり事実に気づいている監督たちに任せたらいいのではないでしょうか。筋肉に頼る癖をつけてしまうと、取り返しがつきません。
・東京武蔵野シニアでは、なぜ筋力に頼るともったいないことになるか、子どもたちに実感してもらい、もっと素晴らしい道筋を指導します。大人にとっては「よくわからない」こともありますが、子どもは直感的、体感的に理解します。すぐにできます。これが中学2年になるとだんだん理屈抜きにできなくなります。だから中学1年でどのような野球に取り組むかが重要なのです。

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